しまなみ3DAYSトリップ ①



海を旅する。

シーカヤックと出会うまでは、全く考えもしなかった。 もちろん、シーカヤックの存在は知っていたし、折りたたみ式のファルトカヤックというものがあるということも、情報としては知ってはいた。

でも、僕の旅のスタイルであるバイク旅や山旅や車旅とは全く次元の違うものだと思っていた。

折りたたみが出来るシーカヤックであるフェザークラフトを手に入れて3年と少し。まだまだひよっこパドラーではあるが、海を旅することに、今ではすっかり虜になってしまっている。

そして、今回旅した瀬戸内の島々を巡るしまなみトリップも、僕の旅心を大いに満足させてくれるものだった。 


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因島(広島県)の北岸から意気揚々と漕ぎ出した我々は、沖待ちしていた貨船の動き始めとバッティングしたらしく、航路をおもいっきり横切るルートを選んでしまった。未だ聞いたこともない悲鳴のような警笛を轟かせながら迫り来る船!

水面80センチから見上げるその貨船のデカさと迫力。まるで、学校の校舎が水飛沫を上げながらグングン迫ってくる感じといえば分かってもらえるだろうか?

瀬戸内は古来から交通の要所。現代においてもそれは変わらず、超ド級のタンカークラスがひっきりなしに往き来している。 その合間を縫って、木の葉同然のカヤックを人力のみを頼りに漕ぎ進める事の怖さを、いきなり、そして痛烈に味わう事になった。

バクバクする心臓に萎縮する身体。恐ろしいったらありゃしない。




細島をかわし、佐木島と小佐木島の間をすり抜けると、目の前に広がる湾。遠く霞む船影がいくつも見える。しかし、大潮の潮流は、僕達のカヤックを前へ前へと進めていく。大潮のしまなみは、後戻りすることを許してくれない。

恐る恐る湾内に漕ぎ進むとそこは・・・完全に航路のど真ん中。前後左右から大小様々な船が僕達のいる場所を目指して集まってくる。定期船に観光船。タンカーに貨物船。迫り来る船の進路を見極め、一隻一隻かわしながら進んでいく。

僕はこの地獄のような船舶のクロスファイアポイントを抜けるまでの1時間で、きっと寿命が5年程縮んだように思う。

命からがら(僕にとっては大げさではなく、ほんとにそんな気分だった)漕ぎ切り、航路が交わる危険地帯を抜けると一転、波もうねりも殆ど無い、ぬるっとした海面が広がる静のしまなみ。

この緩急がめまぐるしく変わるのが、瀬戸内というフィールドなんだろうと思う。




静寂の海を、夕陽を追いかけるようにゆったりとパドリングを続け、そろそろ陽が落ちるという頃に浜に上陸すると、安堵のためか、自然と顔がニヤけている自分に気づいた。



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