旅立ちの朝。

『メタセコイヤ並木に朝日が昇る』
Photo by ほっさん


カーポートでカバーに包まれて旅立ちを待つR100GSを引っ張り出す。タンク下の2箇所の燃料コックを開きチョークを引く。ほんの少しアクセルを開けてキャブレターにガソリンを送り込み、祈るような気持ちでそっとセルボタンを押し込む。


キュンキュンキュンキュン・・・ドゥルン・ドゥルン・・・プスン。

くそっ! 何でやねん!!


一発目のセルスタートをしくじると、あからさまに機嫌をそこねる僕の愛車、BMW製R100GS。ショートストローク、ビッグボアの典型的な’89年型ボクサーエンジンは、走り出してしまえば極上のライディングプレジャーを遺憾なく乗り手に与えてくれる最高のオートバイではあるが、それを享受するためには、まず走り出すための儀式(エンジン始動)を滞りなく終えなければならない。


キュンキュン・・ギャリッ!  ひえぇ~!!!(汗)

キュンキュンキュンキュン・・・ドゥルン・ドゥルン・ドゥルン・・・プスン。
キュン・・・キュン・・・キュゥ~ン。

あかん、バッテリーが死んでまう。

一度機嫌を損ねると、彼女はなかなか言うことを聞いてくれない。


LUCKY STRIKEフィルターシガリロに火を付けて、大げさに吸い込んだ煙を思い切り吐き出す。煙越しには古いBMW特有の膜厚な、ぬめっとしたアルピンホワイトのタンクが輝いている。

しかしなんだ、えらくややこしいオートバイを相棒にしたもんだ。我が事ながら呆れつつ、気を取り直してもう一度儀式に挑む。

弱りつつあるバッテリーをなんとか騙しながら始動を繰り返すうちに


キュン・キュン・キュン・キュン・・・ドゥルン・ドゥルン・ドゥルン・・・ブロロロ!!!!


オイル燃焼による白煙を盛大にマフラーから吐き出しながら、ようやく貴婦人は目を覚ましたようだ。

「まったく、手間がかかるやつだ・・・。」

そいう呟きながらも、薄ら笑いを満面に浮かべている事は、鏡を見るまでもなく分かっている。


さて、出かけようか。まだ見ぬ素敵な風景に出会う旅へ。


☆☆☆


もしあなたが、古いBMWを街中で見かけることがあったなら、もれなくこの一連の所作を経ていると思っていただき、優しく見守っていただければ幸いです^^


コメント

  1. 初めまして。モトグッチのLe Mans1000乗りのテクと申します。
    同じ旧車乗りとして、ご同情致します。
    エンジンのかかりにくさは経験しており「自分のテクニックが悪いのか?」と時々自己嫌悪に陥りながら乗っています(笑)
    忙しいと乗る機会が減り、ガソリンが劣化してなおさらキャブは拗ねてしまいますよね。
    ちなみに近所のバイク屋にR100GSがあり、一瞬乗り換えを考えて検索して、こちらにたどり着きました。もし、購入することがありましたら、よろしくお願いいたします。

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    1. 放置気味のブログにつき、コメント気づかずに失礼しました(汗)
      旧車乗りは良くも悪くも愛車の欠点を愛情に昇華する術を持っていて、僕も旧車乗りの端くれとして、R100GSを溺愛しております。
      まぁ、どう考えても普通の人にとっては、厄介な乗り物となるんでしょうね~(笑)
      こちらこそ、ぜひぜひ宜しくお願いいたしますm(_ _)m

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