誰かが来ている…。
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・。
後ろから確実に近づいてきている足音。
振り返るのが怖い。
ザッ・・ザッ・・ザッ・・。
間違いなく近づいてきている。
恐れているのは別に妖怪や獣の類では決してない。もちろん熊や猪、はたまた魑魅魍魎が背後から迫ってきたら怖いなんてのを通り越して気絶するか発狂するだろうけど、今、恐れているものとは少し違う。じゃぁ、何がそんなに怖いのか…?
ちょっと恥ずかしくてなかなか言いにくい事ではあるんだけれど、この際告白してみようと思う。
若くもなく、山の初心者で、体力も無いただのおっさんだってことを自覚しているにもかかわらず、かたや重い荷を背負い、息を乱す事なく、急峻な山道を力強く闊歩するというダンディで屈強でデキる男になりたいと渇望している自分。山行の最中は、そんなハードボイルドな男で冒険野郎の気分に浸りながら登っている。そんな最中、後ろから足音が聞こえてくるといつも願う。
『た、頼む。後ろから俺を今抜かそうとしている奴が、海兵隊の様なマッチョでワイルドで強靭な肉体を持つ男であってくれ・・・』っと。
それならば、渋々ではあるけど抜かされる事は容認できる。
背後から迫ってくる足音はリズミカルに土を蹴り、今まさに背後にいて僕を追い越そうとした刹那、
「こんにちは〜♪」
張のある挨拶を残して歩き去ってゆく方が、僕よりも明らかに二回り近くもご年配だった時のやるせなさといったら・・・。
分かってはいる。登山に年齢も性別も関係ないってことは…。
無敵でダンディーでナイスガイのイメージだったはずの僕は、こうしていつも、ドラえもんがいない時の【のび太くん】となって山頂にたどりつく。
って話なんですが、分かってもらえますか?(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
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