いつまでもビーン!!


 2021年2月。僕は二十余年ぶりに山にいた。


呼吸すらままならない程に息は上がり、降り止んだばかりの粉雪がサラサラと風で飛ばされる雪面を捉える両脚は、極度の筋肉の疲労によりギュンギュンと攣り始め、一歩踏み出すごとに「うぐぐぐ・・・!」っと引き攣る太ももと格闘しなければならないほどに疲弊していた。

膝に両手をついて上半身を支え、パウダースノーが舞う雪面を無心で見つめながら、いつまでも落ち着かない荒い息に喘ぎ続ける。

僕の横を通り過ぎる多くの登山者達は全く疲れを見せることなく、談笑しながら一定のリズムを刻み、力強く山頂に向かって登ってゆく。

あまりの自分の不甲斐なさにトレースを外れて新雪の上に座り込む。


「なんだこれ? なんの罰ゲームだ? 何故俺は、こんなクソつまらん雪深い山の中にいるんだよ・・・。」


心のなかで思いつくままの悪態を吐きまくって雪に倒れ込む。静寂の中、『ギュッギュッ』っと雪面を踏みしめる登山者の足音が聞こえる。

寝転んでひとしきり休んだ僕は、顔だけ上げて周囲を見渡す。

そこには、真っ白な雪原が澄んだ紺碧の空へと続き、浅い角度から照らす冬特有の優しい朝日をあびた登山者達がゆっくりと高みを目指して歩く姿が浮かび上がる。

僕にはその人達が、もれなく力強く、格好よく、そして美しく見えた。


『頑張って登ってたら、いつかあんな登山者になれるのだろうか・・・。』


気を取り直し、僕もその列に続いた。

突然訪れる太ももの《ビィィィ~~ン!!!》っていう強烈な痛みにビクッ!!ってもだえながら歩いてたので、傍からみたらさぞ滑稽だったろうな・・・💦

☆☆☆


屈辱のあの雪山から半年が過ぎ、週末になると山へ通い、延べ50座近くを登ってきた。

しかしなんだ・・・これだけ頑張って、一向に成長の兆しが表れないのはいったいどういうことだ?


ダンディでハードボイルドな山登ラーへの道は、まだまだ遠いなぁ~・・・(泣)



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