夢の縦走路。
まだ若かったあの夏、僕は立山を登っていた。
一ノ越を越え、雄山山頂まで続く急峻なガレ道を、重い足を引きずりながら這うよう歩いていた。
次第に空気が薄くなるからだろうか、低山登山では考えられないほどに息が切れる。吸っても吸っても肺が満たされないもどかしさをこらえながら、悪い足場に意識を集中する。
一歩・・・ゼェゼェ・・・また一歩・・・ハァハァハァ。
ときおり、『ファヒャヒュゥ~ッ!!』 みたいに表現できないようなみっともない呼吸音が喉から漏れだして、あまりの気まずさに逃げ出したくなったりしながらも、一向に近づいてこない山頂を見上げて絶望しながら何気なく振り返った先、遠くに小さな山荘が見えた。
周囲を急峻なアルプスの峰々に囲まれているにもかかわらず、その山荘の周囲だけは嘘みたいに平坦で、ぽつんと見える赤い屋根がやけに印象に残った。
帰宅した後、あの小屋が五色ヶ原山荘で、その周囲に広がる美しい平原が、雲上の楽園といわれている五色ヶ原だと初めて知った。
行きたい・・・あのキュートな小屋まで歩いてみたい。もっというと、あの五色ヶ原を横切り、越中沢岳の向こう、スゴ乗越を越え、急登を登り詰めた先にある北薬師岳のその先、北アルプスの女王と称される薬師岳のピークを踏んで折立に至る30kmの長い縦走路を、衣食住を背負って旅してみたいぃぃぃ~~!!!
・・・って妄想を抱いてから早20余年。光陰矢の如し。あっという間に時は流れ、まだ若くピチピチしていたあの頃の僕は、今や見る影もなくすっかりくたびれて、そんな夢を抱いていたことすら完全に忘れていた(笑)
そんな僕だったけど、2年前に立山を再訪し、あのガレた雄山までの急登を登っていて、あまりの辛さに半ば呼吸困難になりかけてゲフォゲフォ咳き込みながら足を止め、ふと何気なく振り返った時、遠くに赤い屋根の山荘を見つけた時の嬉しさったら!
「あ~そうだった。僕はあの小屋に行こうと思ってたんだった。」
その瞬間、止まっていた時間が、『カチッ... 』て音を立てて動き出した気がした。
想い続ければ願いは叶う。(まぁ、20年間くらいはすっかり忘れてたんだけど...)
色んな山を経験してそれなりにスキルは積んだ。道具も揃ってる。情報はツワモノのYAMAPの人達が教えてくれるし、ジョギングも始めた(笑)
今の僕なら、室堂~折立縦走をやれるハズ...多分。ダメだと思ったら、とっとと逃げ帰ってくればいいんだから。
いつかきっと…と夢膨らませたあの日の僕。そのいつかは、ひょっとしてこの夏なんじゃないかとの予感を覚え、今僕は、ちょっとドキドキしてます。(*´ω`*)
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